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colon / おはなし
:◆印については補足のページで解説

■ 第二話 ■


出発の村を旅立ってからおよそひと月。
ミンとシンクは目的地である王都へたどり着いていた。



旅の疲れを癒すため、今夜の宿を探そうかと街中をさまよい歩くふたり。◆1.
しかし暗い路地に差し掛かると無骨な男たちが数人、ぐるりとふたりを取り囲んだ。

「あんたら見ねぇ顔だな。このあたりを通るにはお代がいるんだが…わかるよな?」



「王都なんて言っても、たいしたことない町なのね」
あからさまな盗賊行為にあきれつつ身構えるミンとシンク。

ふたりの姿勢に殺気立ち各々得物を構える盗賊たち。◆2.

だがいざ開戦というときに、彼らの間に割って入ってきた影があった。
「ちょい待ちーっ!!あんたらまたやってんの!?」
飛び込んできたのは小柄な少女。
そしてミンたちが加勢するまもなくあっというまに盗賊たちをのしてしまった。◆3.



「怪我はない?お二人さん」
振るわれなかった刃をコロンへと収めるミンたちを見て、ひとり納得した少女。
「なんだお仲間だったのね。けどこいつら性質悪いから関わらないほうがいーよ」
少女は”エミル”と名乗ると、心配だからとふたりを自宅へ招いた。

招かれた家では手荒な歓迎が待っていた。
遊び盛りの子供が4人。珍しい客人に興奮し一斉に遊びをせがんできた。



やがて日が傾くころ。
盗賊に襲われたあとのようにぼろぼろで横たわるふたりの姿があった。◆4.

晩になり、エミルの家へ泊まることとなったふたりは町の状況を聞いた。
盗賊たちが幅を利かせている要因。
彼らに強力な武具を提供しているという黒幕。
それは町に潜伏し魔法を帯びた武具を作り出すという厄介な魔術師の存在だった。◆5.◆6.

話を聞いたミンは、やがてエミルに提案をした。
「そいつらまとめて叩きのめしてやらない?」






翌朝。
とある酒場にいた盗賊一味たちのもとに、ありがたくない来客が訪れた。
「おーっす!!いるな!よし、歯ぁ食いしばれっ!!」
エミルは一味を3人ほどボコボコにすると嵐のように去っていった。



そんなことを2件続け、3件目に入ろうとした昼下がり。
報復に燃える盗賊一味が武装をし仲間を集め怒涛のごとくエミルに襲い掛かってきた。

その数は見えるだけで30人以上。
まだまだ増えるだろうというのは自明の理。

「──────!!!」「────!!?」「────!!!!」
声にならない彼らの怒号を背に受けながらエミルはたまらず逃げ出した。

先頭こそ少女だが町をうねりまわる強面の大群を、上からじっと覗くものがいた。
見失わないようひっそりと。屋根伝いにエミルの行方を追っていたのはミンだった。



やがてエミルの前にひとりの巨漢が立ちふさがる。
巨大な大剣を持ちフルプレートに身を包んだ盗賊一味の頭だった。

観念したのか巨漢の前で足を止めたエミル。
それに合わせるようにミンは周囲の建物をぐるりと見渡す。◆7.
やがて彼女はコロンから刃を取り出すと、エミルのいる戦場の中へ飛び込んだ。

戦地を駆ける疾風と化したミンは密集する敵の間をするりと走り抜けて行き。
そのままエミルも頭の横も抜けると正面にある住宅目掛けて突っ込んだ。◆8.◆9.

─── ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ ───
すさまじい金きり音が響いたと同時、住宅の中から人影が飛び出す。

「あんま”らしくない”見た目だけど。ミン、そいつなの!?」
「いいえ。けどハズレじゃない。たぶん最後のボディーガードってとこかしら」
ミンはエミルにそう言って返すと、短刀を構える黒ずくめの男と対峙した。



数合の打ち合いの後。男を切り伏せたミンは再度住宅へと飛び込んだ。
ふたたび鳴り響く金きり音をくぐりぬけて駆ける。
最奥に現れたのは件の魔術師と思しき白装束の男、だがミンは勢いそのまま男を素早く切り伏せた。

すると外での決着も直ぐだった。
力の源を失った盗賊たちの武具は鈍らと化し、コロンを使うエミルの相手ではなくなった。◆10.

「一件落着ね」
安堵し一息ついたミン。彼女の横を人影が駆け抜けたのは同時だった。
そいつは倒れている魔術師の体を素早く抱えると窓から飛び出した。

「こいつはもらっていく、手を出すなら容赦はせん」
その男は着地するとナイフを構え言い放った。◆11.



謎の男の動向を警戒し緊張するミンたちに、新たに別の声がかけられた。
「はーいみなさんお疲れ様、武器を収めてくださーい。お役人がきましたよー」
声の主はミンとそう年の変わらない少女の姿。
いつの間にかミンたちは彼女が引き連れてきたであろう警備兵の集団に取り囲まれていた。◆12.

ほとんどエミルひとりにのされた盗賊たちはみな力なく兵士たちに捕まっていく。
「あの魔術師は参考人として、…というか身内の犯した罪ですからこちらに任せてください」
「身内?アンタは?」
ミンの問いに少女は答えた。
「わたしは”シズク”。宮廷導師なんてやってます」



「それ……ホント?」
「ホントですよ。そういえば、職務の為とはいえ部下のした非礼もご勘弁ください」
視線の先には道の端、壁にもたれ佇んでいる先ほどのナイフの男。

視線を戻したミンはシズクに言う。
「そうね、お詫びはかまわないけど、ついでに少しお話しとか構わない?」
「ええ、いいですよ」
場所を変えましょうと歩き出すシズク。

思いもよらぬところで目標との接触を果たすことができたミン。
高ぶる気持ちを抑え、彼女はシズクの背を追い歩きだした。◆13.




一方その頃のシンクは、
子供たちの相手をたった一人で引き受けていた。◆14.

つづく



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