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colon / 第二話 - 補足
:◆ストーリーパートでは記されなかった部分を補足




◆1.王都までの旅路
 街道を歩いてきたとはいえ、最初の村から王都までの道のりは決して楽な旅路ではなかった。
 宿場街道に入るまでは野宿も一度や二度では済まなかったし、慣れない旅に体調を崩すこともあった。
 そのおかげか、この頃になるとミンとシンクの信頼関係はより固いものとなっていた。


◆2.盗賊
 長らく続いていた戦争が終わった煽りを受け、力だけで生きてきた傭兵隊が行き場を失う。
 彼らが食うために盗賊へ成り変るということはこのご時世珍しいものでもなく、王都といえどその例外ではなかった。


◆3.ご町内の用心棒
 治安の不安定なご時世、国が完璧に市民の身を守ってくれるなど保障も信頼もない。
 その為、近隣に住む者たちで自治団体が組まれていった。
 エミルの本職は傭兵ではないが、まわりから意図せず持ち上げられてしまった格好になっている。
 元来人のいい性格が厄介な状況を招いているともいえるが、それが彼女の良さでもある。幸いにご近所さんとの仲はすこぶる良好である。



◆4.エミルの家
 実は警備兵舎の真裏にある。
 日当たりが良くなかったり土地や建物が荒れていたりしたのだが、立地は良い。
 普段エミルが暴力の矢面に立つことが予想されることから配慮された結果である。
 そのおかげか、エミルの家族が重大な危険にさらされた事は今のところない。


◆5.防戦事情
 後手に回らざるをえなかった最大の原因は黒幕の所在が不明であるということ。
 盗賊一味と小競り合いを始めてからこれまで、徐々に敵の武器性能が強力になっていくのをエミルは実感していた。
 これはつまり逐一戦果を調べられており、改良の頻度からいってさほど遠くない場所にいることまでは判明している。
 武器の供給元を断たなければ解決にはならないのは明白だったが、それ以上攻めることはできず防戦に尽力するしかなかった。


◆6.エミルの希望
 エミルがふたりを招いたのは忠告とは別にひそかな期待があった。
 もしも彼らが信用に足る人物なのだとしたら、泥沼に陥っているこの状況を打破する手伝いをしてはくれないだろうかという。
 その期待は現実のものとなった。



◆7.作戦・前半
 ミンが立てた”潜伏魔術師討伐作戦”。
 まず第一段階は盗賊一味の頭を釣りだすこと。エミルは盗賊一味への急襲、陽動を行い街中を駆け回った。
 頭と対峙し足を止めることは同時に、頭の顔を知らないミンへの合図となり。そのまま作戦は第二段階へ移行する。
 第二段階は魔術師の潜伏場所の探索。ミンは高所から敵の位置や動きを観察して、魔術師のアジトを割り出す。
 予想どおり、立ち塞ぐように現れた頭の登場が決め手となってそれは判明した。


◆8.作戦・後半
 最終段階は特攻。エミルは一味を引き付ける囮役になり、その隙にミンは魔術師アジトへ襲撃。
 ここよりスピード勝負になる。時間が経てばエミルは数に押されてしまうのは必至だからだ。
 このときミンは念のためにと、一味の頭と交差するときに敵の鎧と軽く接触した。
 アジトに結界の壁が張られていてもコロンの能力によってアドバンテージを稼げる可能性があった。
 結果それは正しかった。


◆9.懸念事項
 余談として作戦失敗の最大要素がここにあり。それは魔術師がじつは複数だった場合。
 そうなるとミンの力が及ばない可能性が高くなり、敵の篭城を突破できないことも考えられた。
 ミンの刀は直前に記憶した一要素に対し優れた刃を成す能力であり、二種以上の対象には有利性が持てない。
 魔法武具の形態が一種だったのもあり魔術師は単独と推測はしていたが、この点だけはある意味出たとこ勝負であった。


◆10.魔法の武具
 魔術師の提供する魔法武具は分けて二種類。
 独立して効果を発揮しつづける精製型と、術者が術を起動している間だけ効果を発揮する術式型。
 今回使われていたのは後者。利点は前者に比べると手軽で調達が易く、威力調整も利きやすいということ。
 しかしそもそもが”術”の延長なので術者さえ絶ってしまえば一息で戦力が消えてしまうのが欠点。
 ミンは最初の盗賊襲撃の時、倒れた相手の獲物を手に取っており、これを確認していたのだった。



◆11.乱入者
 決着確信の際を狙いやってきた男。
 ミンの攻撃を受けて瀕死の状態である魔術師を助けに来たようにみえたが。実際は生かしたまま捕獲するというシズクの命を遂行するがために最良の機会に割り込んできたのだった。
 もちろんシズクの目的は魔術師に贖罪をさせることではなく、彼からさまざま情報を得るためにあった。


◆12.漁夫の利
 一石二鳥も兼ねる。魔術師の確保と盗賊一味の討伐。
 他者が波を起こしているすきに準備を整え、頃合を見て利を掬いに現れる。なんともおいしいことである。


◆13.裏の思惑
 ミンが魔術師討伐を提案したのはそもそもエミルを助けることが目的のすべてではなかった。
 別の目的は、力のある魔術師に対してミンの存在をアピールすることにあり。
 魔術師達側の情報網を頼りに宮廷導師までに知らせることだった。
 そのため仮に敵が宮廷側の人間だったとしても問題はなく。また作戦が失敗していたとしてもこちらの目的は達成されることになる。
 結果としてダイレクトに響いてしまったわけだが、ミンの思惑は大成功した形となった。


◆14.保険
 シンクがエミルの家に残った理由は、万が一の防衛役である。
 大々的な作戦を展開することによって手薄になった家族の元に凶刃が降りかかるとも考えられる。
 そのための護衛役兼御守り役だった。
 幸いに取り越し苦労のまま、こどもの遊び相手としてボロゾーキンのようになっていくのだった。


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